第3編 運航

第1章 操縦

1-1 小型船舶 操舵の仕組み

①船外機船

ハンドルを回すと、エンジン本体の向きを変えることにより、プロペラの向きを変える。

 

②船内外機船 

ハンドルを回すとプロペラを回すドライブユニットの向きがかわり、プロペラの向きが変わる。エンジンは船内に固定されていて方向を変えない。

 

③船内機船

 

ハンドルを回すとプロペラの後ろにある舵板の向きが変わる。

 

④ウォータージェット船

 

ハンドルを回すとウォータージェットの噴射口の向きが変わる。


1-2 操縦特使

(1)舵効き

1 船の形や推進方式に関わらず、高速航走時は舵の効きがよく、速力が遅くなるほど舵効きは悪くなります。

 

2  潮流などの流れに向かって航行する時や、向かい波の時は舵の効きは良く、逆に後ろから流れを受けてる時や追い波の時は舵効きが悪くなります。

旋回時の傾斜

1 排水型のボートは旋回時に外側に傾斜します。 

 

2 滑走型のボートは旋回時に外側に横滑りしながら内側に傾斜します。


キック

 

(3)キック

航走中に舵を切ると船尾が元の針路の外側に押し出されます。(右に舵を切ると船尾は左に)この現象をキックと言います。

 

キックを意図的に利用すれば、船からの落水者(右舷側に落水した場合は、直ちにニュートラルにするとともに右にいっぱい舵を取ります。)や水面の浮遊物をプロペラに巻き込まないよう船尾を振って避けることができます。

 

 

(4)プロペラの作用

プロペラが回転するとき、水圧の深いプロペラの下部と上部では水圧が異なるために抵抗も変わってくるので、その差によって船尾を横に動かす力が発生します。

 

一軸右回り船では、前進時は船尾を右に、後進時には船尾を左に動かす力が発生します。

プロペラの作用

  舵中央で後進       舵を右に切って後進


 

 

1-3 船体の安定・バランス

トップヘビー

(1)トップヘビーとボットムヘビー

① トップヘビー(重心が高く、復元力が小さい)

荷物などを高い位置に積んだ状態をトップヘビーといいます。

風や波を受けたときや旋回時の船体の傾きが大きくなるので転覆の危険があります。

船体の横揺れの周期は長くなります。

 

ボットムヘビー

② ボトムヘビー(重心が低く、復元力が大きい)

重量物が低い場所に積まれた重心が低くなった状態をボットムヘビーといいます。

復元力が大きくなるので安定性が増します。船体の横揺れの周期は短くなって早くなります。

 


(2)トリム

船首と船尾の喫水の差をトリムといいます。

 

①船首トリム

船首側が船尾側より沈んでいる状態。船首が波に突っ込みやすくなります。

 

②イーブンキール

船首喫水と船尾喫水が等しい。

③船尾トリム

船尾側が船首側より沈んでいる状態。 

適度な船尾トリムは、プロペラの効率が良く、舵効きも良い。

船尾トリムが大きすぎると、船体の抵抗が大きく、速力が出ない。

荒天時などは船首が左右に振れて針路を保ちにくい。


1-4 出入港 錨泊

(1)出入港時の注意点

出入港は、原則として夜間を避け、昼間できれば風潮流の影響の少ないときを選んで行います。

港やマリーナ、およびその出入り口では微速航行(徐行)が原則です。

 

(2)離岸

離岸には前進離岸と後進離岸の二つの方法があります。

どちらの方法でも舵の向きを変える際に船が振れ動き、前進離岸の場合は船尾が、後進離岸の場合は船首が桟橋に寄って行くので、係留ロープを解いたら船を十分に桟橋から話して発進するようにします。

(3)着岸

着岸する前に係留ロープ、フェンダー、ボートフックなどを事前に用意しておきます。

着岸の際は、スピードと舵の調整が重要です。必要に応じて前進、中立、後進を使い分けてスピードコントロールをします。基本的には桟橋に向かって30°ぐらいの角度で接近します。風や流れの影響で船が振られることもあるので、舵を適宜使って方向を修正し最後に桟橋と平行になるように舵をとり、止めます。

 

(4)係留

船を桟橋などに係留するときは、風上側(流れがあるときは上流側)の係留ロープを先に結びます。解くときは逆。

 

(5)錨泊 (錨地と水深、走錨)

アンカリングする際は、水深と底質のチェックが大切です。底質が泥や砂の場合は柔らかいのでアンカーがよく効きます。石や岩、サンゴなどは効きが良くありません。

アンカーロープの長さは、水深の3倍くらい出すので、自船のアンカーロープの長さを考慮し、あまり深いところは避けましょう。

アンカーロープは深さの3倍以上出す

2 走錨

アンカーを打っている底質が悪かったり、風波が強くなると走錨することがあります。

走錨していると分かったときは、泥や砂などの底質の良いところにアンカーを打ちなおし(転錨)ます。

 

走錨の判断

 1 他船との位置関係が投錨時と大きく変わっている。

 2 風を受ける舷がいつまでたっても同じ。

 3 アンカーロープがピンと張ったままになっている。

 4 錨を中心に振れ回っているときはアンカーが効いていて走錨していない。

 

振回り


1-5 河川や狭い水道の航行

(1)河川は流れと水深に注意

河川は大雨のあとは、川の流量が増し、流速が速くなり、浮遊物が多くなります。

河口付近は潮汐の影響によって水深が変化します。

川の湾曲部は内側が浅くなっています。

川幅が急に広がっているところでは、中央部が浅くなっています。

湾曲部の内側は浅い

川幅が急に広くなっているところは中央部が浅い


(1)河川は流れと水深に注意

河川は大雨のあとは、川の流量が増し、流速が速くなり、浮遊物が多くなります。

河口付近は潮汐の影響によって水深が変化します。

川の湾曲部は内側が浅くなっています。

川幅が急に広がっているところでは、中央部が浅くなっています。

 

(2)河口付近は、巻き波や三角波といった危険な波が立ちやすく転覆などの事故が多くなっています。

 

(3)狭い水道

流れと同じ方向へ進む場合は、舵効きが悪くなるので、順調(つれ潮)の強い時は通行を避けるべきです。潮流が反転する前の流れが止まる憩流時あるいは弱い逆潮の最も操縦しやすい時期に水道を通過するようにしましょう。流れが速い時は通航を避けましょう。

 

(4)狭視界時の航行

① 見張り員を増員するなど見張りを厳重にする。

② 窓を開いて他船の霧中信号の音を聞き漏らさないようにする。

③ 視界の半分で停止できる速力に落とす

④ 昼間でも航海灯を付けて目立つようにする。

⑤ 自船の存在を知らせるために、霧中信号を行う(ホーンを鳴らす。なければ笛)

⑥ 航海計器などで常に自船の位置を把握する。

  岸からどの位離れているか水深はどの位か。

  船位が分からなくなった時はやみくも走らず、エンジンを中立にして停留し、視界の回復を待つ。エンジンは止めない。

 

1-6 曳航時の注意点

(1)曳航

① ロープの取り方。

丈夫なロープを使う。

ロープの長さは、引く船と引かれる船の長さの和の3倍程度とします。

ロープの取り方は、引く船の中心に荷重がかかるように後部両側のクリートにÝ字型にロープを取り、引かれる船は前のクリートに結ぶなど、ロープが両船の船首尾線上を通るように結ぶ。緊急時にはすぐ解き放せるように結ぶ。 

 

②曳航時の操船

引かれる船はできるだけ軽くする。人や荷物は、できるだけ引く方の船に移す。

重心を船尾よりにし、前を軽くする。

引き始めは微速でゆっくりと進み、曳航ロープが張ったら徐々に増速します。が曵航中は常に低速で行います。

 

③波浪が高いときは曳航ロープを長くします。

狭視界時や狭い水道を通過する場合、交通量が多いところは曳航ロープを短くし速度を落とします。

 

(2)水上スキー等を引く場合

①引く船にプレーヤーの状況を監視する見張り役を立てる。

②見張り役とプレーヤーの間のジェスター(サイン)を決めておく。

③操縦者は、プレーヤーのことが気にかかるが安全運転に徹する。

④トーイング中は自船の操縦性能が制限される。

⑤旋回時のスピードが速く、旋回半径が小さいほど、プレーヤーは外側への降られ方が大きくなる。

⑥プレーヤーを船に引き上げたり、ロープを回収するときは、プロペラへの巻き込みに気を付け、エンジンは止める。

 

第2章 航海の基礎

2-1 海図

海図や水路書誌を水路図誌と言います。

 

(1)海図

海図は、航海に用いる海の地図で、海岸線や灯台、航路標識、水深、障害物など船の航行に欠かせない様々な情報が書かれています。

海図は、最新のものを用います。

プレジャーボート用には、海図とは別に作成された、ヨットモーターボート用参考図があります。

 

(2)高さと深さの基準

海面は、潮汐によって上下していますが、海図で用いられている高さや深さは、下記の水面を基準にした数字です。

 

①最高水面  最大満潮時の水面 (橋の高さ 海岸線)

 

 

②最低水面  最大干潮時の水面 (水深 干出の高さ)

 

 

③平均水面  潮汐がないと仮定した時の水面で、永年の観測値から求めたもの。(山の高さ 島の高さ)

 

2-2 航海計器 磁気コンパス

(1)磁気コンパス

北を0度として右回りに一周を360°とします。

北  N  000°

北東 NE 045°

東  E  090°

南東 SE 135°

南  S  180°

南西 SW 225°

西  W  270°

北西 NW 315°

 

(2)偏差

磁気コンパスが指す北は、磁北といって真北と一致しない。

真北からのずれを偏差という。

地球の磁気が移動するため、偏差は地球上の場所及び年によって変化します。

磁北が真北よりも東側(右)に偏っている場合は偏東偏差といい、

磁北が真北よりも西側(左)に偏っている場合は偏西偏差という。

日本近海は5~8度の西偏差がある。

磁針方位に偏差を加減すると真方位が得られます。

 

 

イラスト

 

 

(3)自差

磁気コンパスは、船内にある磁気を帯びている鉄器類や電気機器などの影響を受けると磁北をささないで東か西に偏るこの偏りを自差と言います。

自差は、磁気コンパスの設置場所が変わったときや鉄器類を近づけたとき、船首方位が変わったときなどに変化する。

 

(4)簡便な方角の測定

北半球では、アナログの腕時計を水平に保ち、短針を太陽に向けるとその時計の12時と短針の中間がほぼ南にあたります。

 

 

(5)GPS 

GPS は グローバル・ポジショニング・システム の略で人工衛星を利用した精度の高い測位システムです。地球上のどこでも、24時間いつでも、どのような天候でも、ほぼ正確に現在地を知ることができます。

 

2-3 沿岸における航法

(1)緯度、経度を求める

海図上で緯度、経度を求めるには、両サイドの緯度メモリで緯度を、上下の経度メモリで経度を測ります。

 

(2)距離は緯度メモリで求めます。

海図上で、測定したい2地点間にデバイダーの両脚を当て、その地点の真横の緯度尺に合わせて目盛りを読みます。

 

(3)距離・速力

緯度1分は1海里で、1海里は1852mです。

1ノットは、1時間に1海里進むスピードです。10ノットは時速18.52km。

 

(4)対地速力と対水速力

対地速力は、不動の大地に対してどれだけの速力で進んでいるかを示すものです。

対水速力は、船が浮かんでいる水に対してどれだけの速力で進んでいるかを示すものです。 潮流などの流れがある場合、対地速力と対水速力は一致しません。水の流れの分だけ差が生じます。

 

(5)速力の計算

速力=距離÷所要時間

 

 

(6)針路(方位)を求める

海図上の方位を測定したい2地点に三角定規を当て、コンパス図上に平行移動して求めます。

船は、風、海流、潮流の影響を受けて流されます。

例えば、5°南に流されるのであれば、5°北に針路をとる必要があります。

 

(7)船位の求め方

①方位線

物標の方位をコンパスで測定し、この方位を海図上のコンパス図の方位目盛りに三角定規を当て、これを物標のところまで平行移動して方位線を引けば舟はその線上にあります。

2つ以上の物標の方位を測れば、それぞれの方位線は1点で交差します。船はその交点にいます。この交点を緯度尺と経度尺で読み船位を求めます。

 

②トランシット

2つの物標が一直線上に重なって見えるとき船の位置はこの一直線上にあります。

トランシットは、船首目標として利用したり、変針目標として利用したりします。

 

2-4 航路標識

光、形、色、音、電波などによって船の航行を援助する施設を航路標識といいます。

 

(1)灯標・立標

障害物の存在を示すための構造物で灯火を発するものを灯標、灯火を発しないものを立標という。

 

(2)灯浮標・浮標

険礁や航路などを示すために、本体を海上に浮かべた構造物で、灯火を発するものを灯標、灯火を発しないものを浮標という。

 

(3)浮標式

標識は、種別毎に本体の塗色や灯光の色が決められていて、トップマークで識別できるようになっている。

 

 

(4)灯台

灯台や航路標識など、灯火を発する

 

第3章 船体、設備、装備品

3-1 船体各部の名称

 

(1)船体の主な構造

1 ハル(船体)

船の外板がかたちつくる船体そのもの。

 

2 キール(竜骨)

船体の最下部を船首から船尾まで通っている主要材で、船体の縦強度を保つ。

 

3 フレーム(肋骨)

キールに取り付けられ、横の強度を保ち、外板を支える主要材。

 

4 ビーム(梁)

フレームの上端を連結する構造材で、横の強度を保ちます。この上にデッキが張られます。

 

5 デッキ(甲板)

ハルの上部を蓋のように覆うかたちで張られています。

 

6 トランサム(船尾材)

船体最後部を構成する板で、船外機や船内外機のドライブユニットがここに取り付けられます。

 

7 ガンネル

ハルとデッキの結合部、または舷側の最上部で、桟橋などへ接岸時に船体の損傷を少なくするためにゴムや樹脂などを張り巡らしている。

 

 

・フェンダー    船体の外舷を保護する

 

 

 

・フェアリーダー  係留ロープを船内に導き、係留ロープの損傷を防ぐ。


(ガンネルはハルとデッキの接合部 ボットムプラグは船底栓 フェンダーは船体の外舷をを保護する)

3-2 設備、装備品、法廷備品

①操舵装置

船の針路を変えたり保持したりします。

 

②アンカーおよび揚錨設備

アンカー(錨)は、船上から投入して海底に食い込ませ船を止めます。

揚錨機(ウインドラス)やウインチでアンカーを巻き上げます。

 

③係船設備

船を桟橋や岸壁に係留する時に使用するのが係船設備です。

係留ロープ、クリート、フェアリーダー、ビット、フェンダー、ボートフックなどがあります。

 

④排水設備

船内にたまった水を排出するための設備で、ビルジポンプ、スカッパー、バケツなどがあります。

 

⑤消防設備

消火器や赤バケツなどがあります。

 

⑥救命設備

救命胴衣、救命浮環、信号紅炎などがあります。

これらはいざという時にすぐに使う必要があるので船倉などにしまっておいてはだめです。

 

⑦通信設備

無線電話や携帯電話

 

 

3-3 発航前の点検

(1)船体外部の点検

①係留の状態

係留ロープやフェンダーに異常がないかどうか点検します。

 

②船体の状況

バウ、デッキ、舷側、スターン、推進機などに異常がないかどうかを点検します。

 

③船体の安定

傾き(ヒール)、揺れ具合、トリム(船首と船尾の喫水の差)などを見て船体の安定性を点検します。

 

(2)設備、装備品、法定備品の点検

操縦装置(ハンドル、リモコンレバーなど)、アンカー及び揚苗設備、係船設備(クリート、ビット、ロープなど)、排水設備(ビルジポンプ、スカッパー)、各種計器、船灯、開口部(ドア、ハッチ)、ハンドレール、救命設備(救命胴衣、救命浮環)、消防設備(消火器、赤バケツ)、通信設備(無線機、携帯電話)、法定備品の航海用具に不備や異常がないか信号紅炎など有効期限のあるものについてはその期日を点検します。

 

 

3-4 船体の保存や手入れ

(1)海上係留している場合

1 船底に付着する海藻や貝類(フジツボ)などに注意し、定期的に上架して手入れをします。

フジツボなどを鉄のへらなどで取り除き、フジツボ等が付かないよう船底塗料を塗ります。


2 プロペラシャフトやドライブなどに取り付けてある防食亜鉛の点検・交換を行います。

亜鉛の大きさが半分ぐらいに減ったら新品と交換します。

防食亜鉛の働きを妨げるので塗装してはいけません。

(ドライブ等が水中で水と摩擦すると静電気がたまります。たまった電気がドライブから海水中に放電するとドライブの金属が溶けます。ドライブ等に防食亜鉛を取り付けておくと、イオン化の強い亜鉛が先に海水中に放電し、亜鉛が溶けることによって周りの金属を守ることが出来ます。)

 

3 ときどきハッチ等を解放し船内を乾燥させます。

 

4 上架したら船底栓(ボットムプラグ)を抜きビルジを排出します。タンクの内部を点検しておきます。

 

3-5 ロープワーク

 

ロープを結んだり、つないだりする作業を結索(ロープワーク)といいます。

・もやい結び

係留ロープを桟橋の鉄のリングなどに結びます。

 

・巻き結び

係留ロープを桟橋上のビットに結びつけます。

 

・本結び

同じ太さを同じ太さのロープを繋ぐのに用います。

 

・ひとえつなぎ ふたえつなぎ

太さの異なる2種類のロープを繋ぐ時に有効です。

 

・クリー止め

クリートにロープを止める結び方です。

 

・いかり結び

錨にロープを取り付けるなどに使用します。

第4章 機関の取り扱い

4-1 エンジンの基礎知識

プレジャーボートの海難事故の中で、最も発生件数が多いのは機関故障です。機関故障の原因の多くが機関取り扱い不良です。こうした事故を未然に防ぐためには、ボート用エンジンの置かれている環境や特徴をよく知り、エンジンの原理や仕組みを理解しておくことが必要です。

(1)ボートエンジンの特長・使用環境・事前点検

ボート用エンジンは、年々小型高出力化するなど性能改善が図られていますが、厳しい条件にさらされています。

 

〔自動車用エンジンに比べ厳しい条件下で使用されている〕

・常に、塩分を含む湿気にさらされ、年間に使用する回数が少なく、その時期が夏に偏っている。(冬場は6ヶ月以上海上等に放置されている船が多い)

・波等で動揺が激しいなか、常に高負荷で運転される。

従って出航前の点検は不可欠です。

 

(2)ガソリンエンジンとディーゼルエンジン 燃焼方式の違い

① ガソリンエンジン

燃料はガソリン。燃焼方式は、燃料と空気の混合気をシリンダー内で10分の1に圧縮し、電気火花(点火プラグ)を飛ばして着火(爆発的燃焼)する。

 

② ディーゼルエンジン

燃料は軽油。燃焼方式は、空気のみをシリンダーでガソリンエンジンの2倍近く(18分の1に)圧縮し(圧縮された空気は600°の高温になる)、高温になった空気に燃料油を噴射(250°で火が付く)し、自然着火(爆発的燃焼)させる。

 

(3)4ストロークエンジンと2ストロークエンジン

 

4ストロークエンジン

 

・4ストロークエンジン ⇒ ピストンが2往復する間に1回燃焼する。

2ストロークエンジン

 

2ストロークエンジン ⇒ ピストンが1往復する間に1回燃焼する

比 較 4ストローク 2ストローク
構造 複雑 単純
重量単位出力  小さい (本体重量が重い) 大きい(本体重量が軽い)
騒音 小さい 大きい
排気 未燃焼ガスが混じりにくい 未燃焼ガスば混じりやすい

4-2 エンジンの構成・役割

(1)エンジンの構造

船内外機の構造

船外機の構造


(2)4ストロークエンジンの燃料系統

キャブレター方式

*4ストロークエンジンの燃料系統の経路

①燃料コック→②燃料フィルター→③燃料ポンプ→④キャブレター→⑤吸気マニホールド

*役割

燃料コックは開閉。 燃料フィルターは燃料中のゴミを取り除く。セジメンターは燃料中の水を分離して取り除く。 燃料ポンプは燃料を一定の圧力でエンジンに送る。 キャブレターは霧状にした燃料と空気の混合気を作る。

 

電子制御方式

 

 

(3)潤滑油系統

 

(4)冷却水系統

 

(5)電気系統

 1 バッテリー

 2 オルタネーター

 3 スターターモーター

 4 点火放置

 

 

 

(6)Vベルトで動かしている装置

オルタネーター(交流発電機) 冷却清水ポンプ 海水ポンプ

 

 

 

 

 

 

4-3 発航前エンジンの点検

(1)燃料系統

①燃料の保有量は、予備も含めて十分あるか。

②燃料タンクのバルブ(コック)を開けた後、燃料ホース、燃料フィルター、燃料ポンプなどに漏れがないか確認する。

③セジメンターや燃料フィルターにドレン(いらない水)やゴミがないことを確認する。

④燃料タンクのエアベントスクリュウ(空気抜き口)が開いていることを確認する。

 

(2)潤滑油系統

①エンジンオイル

エンジンオイルは、エンジン内の回転部分や摩擦部に供給され、油膜をつくって磨耗を防ぐと共に、冷却を行い、シリンダーとピストンの間の気密を保ちます。錆の発生も防いでいます。

 

②潤滑油の点検

*オイルレベルゲージを利用して、エンジンオイルの量と質(粘度や汚れ)を点検する。

*エンジン本体やオイルフィルター取り付け部等からオイルが漏れていないことを確認する。

 

③バッテリーの点検

*バッテリーの取り付け状態の確認、緩みなく取り付けられているか。

*ターミナル(バッテリーに接続している太い線)の締め付け状態の確認、プラス線はバッテリーの+に、-線はバッテリーの-にしっかり接続されているか。

*バッテリー液の量を点検する。

バッテリー液が自然に少なくなったときは、蒸留水を液面レベルになるよう補充する。

 

4-4 始動・停止

(1)始動

1 船内外機、船内機は、エンジン始動前にブローワー(換気扇)を回してエンジンルームの換気を行う。船外機は必要ない。

2 リモコンレバーの「中立」位置を確認する。

3 スタータースイッチをひねってエンジン始動。

 

(2)暖機運転

始動後、アイドリング状態で暖機運転を行う。

その間に各メーターの示度を確認。

 

(3)停止

特に高速運転を続けた後は、リモコンレバーを中立位置にして冷気運転を行ってからエンジン停止。

 

(4)チルト

船外機や船内外機は、ドライブ(プロペラ)をチルトアップしたりチルトダウンできる。

 

(5)小型船外機のドライブの角度調整

100馬力位の船外機は、油圧でドライブの角度調整を行うが、小型船外機はチルトピンの差し込む位置で角度調整を行う。

 

(6)運転中の注意事項

1 航行中浮遊物の接触によってプロペラが変形した場合船体に振動が生じる

2 オーバーヒート(エンジンを止めてはいけない。エンジンの回転数を下げて冷やす。)

3 エンジンから聞きなれない音がした場合や油の焼ける匂いがした場合は、エンジンの回転数を下げて冷ます。

エンジンの冷却水取り入れ口に、ごみやビニール袋などが詰まった場合、エンジンの回転数を下げ、エンジンが冷えてからエンジンを止めてゴミを取り除く。

 

*突然エンジンが停止する原因としては以下の原因が考えられる

プロペラへのロープの巻き付き

燃料系統の故障

オーバーヒートでエンジン焼き付き

(7)計器が異常を示した場合の原因・処置

 1 冷却水温度計

エンジンの冷却水温度を示し、暖気運転の修了やオーバーヒートの兆候が分かる。

〔異常時の対応〕冷却水とり入れ口のつまり。リザーブタンクの水量。冷却水ポンプを駆動しているVベルト。等を調べる。

 

 2 油圧計

エンジン各部への潤滑油(エンジンオイル)の圧送状態を示し、油圧の急な低下など潤滑油系統の異常を確かめることが出来る。

〔異常時の対応〕エンジンオイルが極端に減少していないか。オイルフィルターのつまり。オイルに水の混入。等を調べる。

 

 3 電圧計・電流計

・電圧計は、バッテリーの電圧を調べる。キーをONにしたとき12Vの電圧があるか、エンジン運転中は充電のため電圧が上昇するか。等を調べる。

・電流計は、バッテリーの充電+放電-、充電+の電流を調べる。

〔異常時の対応〕

オルタネーターを駆動するVベルトが緩んでいないか。オルタネーターからバッテリーへの配線に問題はないか。

 

 

4-5 点検・整備

(1)船外機の海水冷却系統の洗浄

〔手順〕

①洗水ユニットを船外機に取り付ける。

洗水ユニットにつないだホースの蛇口を開く。

③エンジンを始動する。

④検水孔から水が出ていることを確認。

*新しい機種では、エンジンに直にホースを挿し、エンジンを掛けなくても洗浄できるものもある。

 

(2)エンジン使用後の格納点検

海上係留の場合は、キングストンバルブ(海水取り入れ口のバルブ)を閉じておく。

メインスイッチをオフにする。

燃料タンク内の結露を防ぐため、燃料は満タンにしておく。

 

(3)部品の交換時期

〔エンジンオイル〕

・交換前の時期であっても汚れがひどければ交換する。

・あまり汚れていなくても交換時期が来たら交換する。

・オイルが白濁している場合。

 

〔防食亜鉛〕

・半分位に減ったら交換。

・損耗がなくても定期的に交換する。

 

(4)長期保管前の格納点検

エンジン及びドライブの冷却海水系統を清水で洗浄する。

バッテリーは、取り外し定期的に充電(常にフル充電)し、風通しの良い(冷暗所)に保管する。バッテリーの液量は常に規定量にしておく。

燃料タンクは、満タンか空にする。(満タンにするのは、タンク内の結露防止)

 

(5)冷却水系統のインペラの交換は、整備士に依頼した方が良い。

第5章 気象・海象

5-1 天気の基礎知識

(1)天気記号

 

  イラスト

 

(2)風向 風力

天気記号から伸びている長い線の方向が風向を表します。

風向の線に付いている短い線が風力を表します。

 

(3)高気圧・低気圧

 周囲よりも気圧の高い部分を高圧部、周囲よりも気圧の低い部分を低圧部といい、その中で閉じた等圧線で囲まれているところ高気圧、低気圧といいます。

1 高気圧  イラスト

 

天気図には、高気圧は「高」あるいは「H」示されます。高気圧圏内では中心から右回り(北半球)に風が吹き出し、中心部付近では下降気流が生じて空気が乾燥し、一般に天気が良い状態となります。

 

2 低気圧  イラスト

 

低気圧は、「低」あるいは「 L」 で示されます。低気圧圏内では周囲から左回り(北半球)に風が吹き込み、中心部付近では上昇気流が生じて雲が発生し、雨や雪を降らせます。

 

(4)前線

性質の異なる二つの気団(空気の大きなかたまり)が接触する境界面を前線面と言います。

前線面が地表面と交わる線が前線です。

 

1 寒冷前線  イラスト

 

寒冷前線は、突風や雷を伴い、短時間に強い雨が降ります。寒冷前線が接近してくると南から南東よりの風が、通過後には風向きが急変し、西から北西の風に変わります、気温が下がります。

 

2 温暖前線 イラスト

温暖前線が近づくと気温、湿度が次第に高くなり、弱い雨がしとしとと絶え間なく降ります。

 

3 停滞前線  イラスト

 

寒気団と暖気団の勢力がつりあっているため、ほぼ同じ所にとどまっている前線(梅雨前線など)です。長雨をもたらす。

 

4 閉塞前線  イラスト

 

寒冷前線が温暖前線に追いついた前線です。閉塞後低気圧は衰退する。

 

(5)風

 

風は、気圧の高い地域から気圧の低い地域に向かって吹きます。両地の気圧の差が大きい(等圧線の間隔が狭い)ほど風は強くなります。

 

1 風速

風速とは、1秒間に空気が移動する距離を「メートル/秒」で表します。

風速は、速くなったり遅くなったりたえず変化しているため、単に「風速」といえば10分間の平均風速で表します。

もっと強く吹いたときを瞬間風速といいます。

 

2 風力

気象庁風力階級は0から12までの13段階に分かれています。

・風力2  風速は1.6から3.3m  顔に風を感じる程度。 小波ができる。波長は短いがはっきりわかる。波頭は滑らかに見えて砕けていない

・風力3  風速は3.4から5.4m 木の葉や小枝が絶えず動く 軽い旗は開く。大きい小波ができてくる 波頭が砕け始め所々に白い波が現れることがある

・風力4   風速は5.5から7.9m 砂ぼこりが立ち、紙片舞い上がる。小枝が動く。 小さい中波ができる。白波がかなり多くなる。

 

小型のボートの場合、風力4以上での航行は避けるべきです。

 

2 海陸風

夏の海岸地方では、昼間は海より陸の温度が上がるため、海から陸へ海風が吹きます。

夜は、陸の温度が下がり海の方が温かいため、陸から海へ風が吹きます。

したがって、朝と夕方の逆転する前は風が止まります。朝凪、夕凪。

 

 

 

(6)波

波は、風が海面を吹き渡ることによって生まれます。

波の方向は、風と同じで来る方向で表します。

 

5-2 潮汐・潮流の基礎知識

(1)潮汐

1 潮汐とは、月と太陽の引力作用により、海面が周期的に上下すること。

2 潮汐の干満は1日に2回ずつあり、約6時間毎に海面が上下する。

3 海面が最も高くなった状態を満潮(高潮)、最も低くなった状態を干潮(低潮)という。

4 相次ぐ満潮と干潮の差(潮差)が最も大きくなる時を大潮といい、新月または満月の1~2日後。

差が最も小さくなる時を小潮という。(上弦の月または下弦の月の頃) 

 

 イラスト

 

(2)潮流

潮汐によって生じる海水の流れを潮流と言います。

潮流の流向は、風向と異なり流れていく方向で表します。北流は、北へ流れて行く。(北風は北から吹く風)

第6章 荒天時の操縦

6-1 荒天準備

1 ライフジャケットの着用確認

2 重い荷物は、低い位置に固定する。

3 ビルジポンプの作動状態、スカッパーが詰まっていれば掃除して水はけの良い状態にする。排水設備のチェック。

4 近くの避難港や入り江、マリーナの位置を確認。

6-2 波への対処

(1)向かい波は危険が少ない

向かい波(船首方向からの波)を受けて航行するのが、転覆などの危険が最も少ない。正しスピードを出していると波を越えるときにジャンプして海面にたたきつけられるので舵がきく範囲で速力を落とす。

正面から波を受けると船首が持ち上げられ着水時の衝撃が強いので、斜め船首30度位の角度で波を受けるようにする。

 

(2)危険な横波

船にとって最も危険なのが横波を受けることです。

波が大きかったり、巻き波(磯波)の場合は転覆の恐れがあります。

横波を受けて航走しているときに、ボートの横揺れ周期と内の周期が同調すると、横揺れがいっそう激しくなり危険です。このようなときには、船体が波を受ける角度を変えることにより同調を防ぎます。

 

(3)追い波とブローチング

1 波を船尾から受ける追い波の場合は、波をサーフィン状態で滑り降りてしまうと、舵がきかなくなったり、波に突っ込んでしまったりします。船首が振れやすくなります。

波が大きい場合は、波のスピードに合わせ、波の登り斜面に位置し波について行くようにします。

 

 イラスト

 

2 ブローチング

追い波で特に危険なのが、船がブローチングを起こすことです。これは、船が波の斜面を下るときに舵がきかなくなって船尾が横滑りし、横波を受ける形になって横倒しになることです。

 

 イラスト

 

 

 

(4)磯波・三角波

1 磯波

波長の長い風浪やうねりが沿岸の浅い所に進むと、波形が変形(波長が短く、波高が高くなる)して頂上が鋭くなり、やがて安定を失って崩れる波で、小型船にとって非常に危険です。

 

 

2 三角波

進行方向の異なる複数の波がぶつかり合って出来る波長の短いとがった不規則な波で、小型船にとって非常に危険です。

河口付近など流向と波が違った方向からぶつかるところや波同士がぶつかるところは、波高が異常に高くなる三角波が発生する。

 

第7章 事故対策

(1)衝突

1 エンジン停止

2 人命第一で、負傷者や落水者がいないかを確かめる。

3 船体の損傷程度をや浸水の有無を確かめ、沈没の恐れがある場合は、乗員を損傷の少ない船に移乗させる。

 

(2)乗揚げ

1 エンジン停止

2 船体、プロペラなどの損傷程度、浸水の有無などを調べる。

3 潮時を調べ潮が満ちてくるのを待ちます。

 

 

(3)浸水

1 浸水の原因を調べ、タオルを詰めるなど応急処置を施し、できるだけ浸水を止める。

2 なるべく浸水部を風下にする。

3 沈没しそうな場合は、直ちに救助を求め、ライフジャケットの着用を確認し退船する。

 

(3)火災

1 ただちに消化器を使い消化に全力を挙げる。

2 消火活動中もエンジンがかかり、操船できるようであれば火元を風下に、風上から消火活動をする。

3 消化が困難な場合は、救助を求め、ライフジャケットの着用を確認し退船する。

 

(4)機関故障

1 周りの状況を確認し、浅い所(水深が10mほど)でアンカーロープが50mほどの長さがある場合は、アンカーを打って船を止める。

 

2 深くてアンカーが効かないところでは、抵抗物を流すなどできるだけ流されないようにします。

 

3 燃料系統、電気系統、冷却水系統などを調べます。

故障の原因が分からないときは、マリーナや自動車の整備士に電話で聞きます。自分で修理できないときは救助を要請します。

 

(5)落水

① 落水者がするべきこと

1 船が通りがかったらライフジャケットに付いている笛を吹くなどで知らせます。

2 無理の泳ごうとせず、体力温存に努めて救助をまつ。

 

② 落水者を発見したら

1 小型船の場合は、ただちに要救助者に近づき救命します。

2 ボートフックが届かない距離では、救命浮環を投げ与えます。

  昼間は、自己発煙信号(オレンジ色の煙が出る)を救命浮環に結びつけて投げ与えます。

  夜間は、自己点火灯(赤い光)を救命浮環に結びつけて投げ与えます。